東京は「歴史のない都市」と言われます。その理由として、1945年の東京大空襲によって都市の半分近くを焼失し、都心部に江戸以来の歴史を象徴する建造物がまったく残されていないことがよくあげられます。けれども見方を変えれば、当時既にロンドンやニューヨークと比肩する規模を持った世界都市の大半が焦土と化したこと自体が、東京という都市に固有の歴史と言えるのではないでしょうか。
焼け野原と化した東京の風景は、近代日本を駆動するエンジンとなってきた「帝都東京」の「終わりの風景」であるとともに、私たちがよく見知った今日の東京の「はじまりの風景」でもあります。それは文字通り東京の「死」と「生」が混ざり合った両義的な時間と空間であり、今日の東京の原点と言えるはずです。しかし、実際の都市空間でそうしたことを想起する機会はほとんどありません。
TOKYO LITTLE HOUSEが建てられた、敗戦から間もない東京はどんな都市だったのか。私たちは、第二次世界大戦後・占領期の東京や、米国立公文書館に収蔵されている写真の調査・研究を行ってきた佐藤洋一氏をゲストキュレーターに招き、敗戦直後に撮影された東京の風景を通して、東京のルーツに改めて向き合ってみたいと思います。